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KAYANOのイタリア気分 No.65

2007年5月号

塩味は永遠の課題!

長いこと料理に携わって来て、一番難しいと思う味付けは塩味。シンプルなだけにとても奥が深いのです。

料理の本にはよく、小さじ1/2とか小さじ1とか量が書いてありますが、私はレシピに分量を書いたことがありません。「いい加減なレシピ!」と思われるかもしれませんが、塩の量を書くなんてそんな無責任な事が出来ないのです。

3種類の塩

たとえ同じ条件で料理を作ったとしても、野菜・魚・肉等の素材がいつも同じ状態・鮮度とは限らないし、火の入れ方や、季節によっても違うし、個人の好みだってあるのだから…..。塩は素材の持ち味を最大限に引き出すパワーがあると同時に台無しにしてしまう危険な調味料!

私はレッスンで3種類の塩を使い分けている。料理の味付けには溶けが良く微調整のきく精製塩(sale)・アク抜きや保存にはマイルドな粗塩(sale fino)・パスタを茹でるにはミネラルが多い岩塩(sale grosso)。イタリアではどの家庭にも塩が2~3種類あって、用途によって使い分けをしていた。ラフォンテでもそれを忠実に守っているというわけ…。

そんな塩にこだわる国から戻ったばかりには、塩加減にとにかく注意する。どうしても濃い味になりがちだから…。

塩で保存したケッパー・オリーブ・ ドライトマト

イタリアの食事は生ハム・サラメ・チーズ等の塩分の多い前菜で始まることが多く、それに負けないようにプリモピアット・セコンドピアットにも塩味を効かせる。ワインを楽しむにも、味の濃い野菜・肉・魚・オリーブオイルの味を最大限に引き出すにも、ある程度の塩が不可欠になってくるのだ。

イタリアンの味付け方法としては、酸味はトマトが中心でまれにビネガーを加える、甘みは野菜を炒めて引き出すことが多く砂糖を使うことはまれ。つまりとてもシンプルかつナチュラル。それに磨きをかけるのが塩味ということになる。

塩で保存するものも多く、アンチョビ・オリーブ・ケッパー・トマト 等。それを料理の素材に使うのだから、ますますしっかりした味付けになる。

現地に行って2~3日は私の味覚も塩の強さを感じるのだけれど、時差ぼけもなくなり乾燥したイタリアの気候に体調が慣れてゆくに従って、イタリアンな塩加減も普通に感じるようになる。

そして日本に戻って直後のレッスンは要注意!イタリアと同じ調子で塩を加えると、不評だし自分でも納得のいかない味付けになる。

高台からみた塩田

イタリア料理の塩の強さは美味しい塩の産地であることも手伝っているのかもしれない。イタリアの塩の産地は南のシチリア州とプーリア州。どちらも地中海の濃い塩水を塩田に引き込み、天日で乾燥させる。ミネラル分が多くまろやかで甘ささえ感じる地中海の爽やかな味がする。

シチリアの西部 トラッパニからマルサラに広がる塩田(サリーネ)を訪ねたことがある。地中海ブルーの空と海に白い塩の山が印象的だった。6ヶ月かけて仕上げるそうだが、水分が多い段階には、屋根瓦のような素焼きのブロックをかぶせて重石にし、太陽と乾いた風にさらしながら水抜きし、純度の高いクリスタルのような塩に仕上げてゆくのだ。

トロッパニから持ち帰った瓦と風車の置き物

トラッパニの街を歩くと、お土産屋さんに素焼きのブロックに絵を描いたものが下がっていた。5年前に持って帰った物がラフォンテの片隅にかかっている。作業の動力になる風車が描かれて、改めて見直すとトラッパニからマルサラに続く広大な塩田の風景が目の前に広がっている気がした。

レッスン中に「先生が仕上げの塩を入れる横顔…真剣ですね。」と生徒にからかわれた事がある。そう、実はその瞬間、私の中では真剣勝負なの!(オーバーですが….)

最後に塩を加えるか?加えないか?の「勇気」

塩味は私の永遠の課題かな??

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