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KAYANOのイタリア気分 No.49

2006年1月号

サルデニアのカルタムージカ(楽器) パーネ カラサウ

前回に続き、サルデニアの旅。

今月は「パーネ カラサウ」=薄くて大きなサルデニアのパン。その工房へ行った時のお話です。

オリスターノに1泊した後、私達は内陸に向かって車を走らせます。海岸から30km程入った島の北東部ヌオーロ県がこのカラサウの故郷です。山がちな地形で、ここがサルデニア島である事を忘れてしまいます。(なんと滞在3日目になるのに海を見ていない私!)

ドライバーのミケーレが連れて行ってくれたのは、ごく普通の民家。迎えてくれたのは笑顔が素敵な御夫婦、アルベルトとルチアでした。リビングとキッチンを通って地下に降りると直径30cmはあるパーネの山。そこが工房でした。

親切な二人は競うように生地の説明を始めます。セモリナ粉と水と生イースト。寝かせる事一晩。それを薄く伸ばし、機械で丸く抜いて休ませるため布にはさんで重ねて行くのです。「ここからは説明より見ていてね!」と奥様のルチア。柄の長い大きな木のトレイに 載せて、生地を一枚づつ石釜に入れて行きます。

寝かせた生地を
薄く伸ばします。

機械で大きく丸く抜きます。

丸く抜かれた生地を
取り出すアルベルト

薪が奥に燃え盛る釜の温度は700~900度。焼く事片面15秒。風船のように膨むのを目にも止まらぬ早さで裏返し、連続で何枚も焼上げていきます。近くでキャッチしてそれを半分にはがし重ねていくのは御主人のアルベルトの役目です。その息のあった仕事には思わず見とれてしまいました。

寝かせた生地を
薄く伸ばします。

ルチアが一枚づつ
丁寧に焼きます。

御夫婦が共同作業で
仕上げて行きます。

パーネ カラサウは元は羊飼いのパンだったそうです。牧草を求めて移動する途中、普通のパンだと乾燥してカチカチ。その点カラサウは状態が変わらないパーネとして携帯されました。そんな理由で島でも特に羊飼いが多かったここ内陸のヌオーロ地方が発祥なのです。保存にむいているとあって市販の物、賞味期限は1年以上あります。

カラサウに塩とオリーブオイルをふってオーブンで温めたものは「パーネグラッティアウ」、ペコリーノチーズと重ねて最後に半熟卵を落すと「パーネフラッタウ」と言う名の郷土料理に変身します。(「パーネフラッタウ」は学生の時、トリノの学校で初めて食べて不思議な食べ物と思ったのを覚えています。)

私も焼いてみました。

カラサウにバージンオイルを
かけて重ね焼くと....。

パーネ グラッティア
出来上がり!!。

パーネ カラサウは別名カルタムージカ(楽譜)とも呼ばれています。楽譜の様に大きく薄いからなのでしょうか?パリパリと食べる音が音楽を奏でる様だからでしょうか?サルデニアのカルタムージカ(音譜)には、羊に頼る生活の知恵と決して裕福ではなかった島の歴史が物悲しい音符で綴られているようにも思えました。そしてなにより釜の前のアルベルトとルチアの息の合ったリズムとタイミングが私には快い忘れられない温かいムージカ(音楽)になりました。彼らの人柄がより印象深くしてく れたのです。

お土産にいただいたカラサウ。御夫婦の事を思い出しながら、その後2週間のイタリア滞在中携帯。大切に大切に戴きました。 (運ぶ距離が長くてかなり崩れてしまいました。その後のツアーに参加した人には 「ボロボロパン」なんて親しみを込めて呼ばれてましたが。。。。でも皆素朴な美味しさに皆感動してくれました。)

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